
「課長級の平均年収が977.4万円」と聞くと、コンサル転職を考えている人にとっては気になる数字です。
ただし、最初に明確にしておきたいことがあります。これはデロイト トーマツの社員給与ではありません。デロイト トーマツが日本企業を対象に実施した、要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査の数値です。転職先の給与表ではなく、複数企業の報酬水準を比較するための市場データとして読む必要があります。
デロイトの2025・2026年版調査では、参加企業における平均年収を次のように示しています。
調査対象は147社で、2025年7月22日から10月31日にかけてWebアンケートを実施。対象年度は各社の直近決算期である2025・2026年度です。
出典:デロイト トーマツ 要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査 2025・2026年版
正社員全体と課長級を単純に比べると、差は242.8万円あります。課長級と部長級の差は289.9万円です。
しかし、この数字を「正社員が課長に昇格すると242.8万円上がる」「課長から部長になると289.9万円上がる」という昇格モデルとして使うことはできません。異なる企業、職種、年齢、役割の人たちを集計した平均値だからです。
もう一つの注意点は、調査上の「課長級」とコンサルティングファームの「マネージャー」が同じ役割とは限らないことです。
一般企業の課長は、組織運営や部下の評価、予算管理を担うことがあります。一方、コンサルティングファームのマネージャーは、プロジェクトの品質、収益、クライアントとの関係、メンバー育成などを担当します。ファームによっては、同じマネージャーでも営業比重や専門性の深さが大きく異なります。
そのため、977.4万円をコンサル転職の目標年収としてそのまま置くよりも、「どの程度の責任を持つポジションで、どのような成果を出せば、その水準に近づくのか」を考える材料にしたほうが実用的です。
転職候補者がオファーを比較するとき、初年度の金額だけでなく、次の昇格までの条件を確認する必要があります。
たとえば、提示年収が850万円と980万円の2社があった場合、980万円のほうが必ずしも有利とは限りません。賞与の変動幅が大きい、役割が限定されている、昇格の条件が曖昧である、といった可能性もあります。
反対に、850万円のオファーでも、入社時の職位が明確で、1〜2年後にマネージャー相当の役割を目指せる仕組みがあり、専門領域を広げられるなら、中長期では選択肢になることがあります。もちろん、昇格時期は個人の評価や組織状況に左右されるため、採用側の説明を確定的な約束と受け取らないことも重要です。
確認したいのは、次のような項目です。
特に転職者は、現在の肩書きをそのまま移せるとは限りません。事業会社で課長を経験していても、ファームではプロジェクトマネジメントやクライアントワークの経験が評価され、別の職位から始まる場合があります。
逆に、特定業界の知見や経営企画、M&A、IT導入などの経験が、ファームの重点領域と合えば、年収だけでなく入社時の役割そのものを交渉できる可能性があります。
今回の調査では、正社員全体、課長級、部長級のいずれも前回より報酬水準が上昇しています。デロイトは、採用力の強化や人材流出の回避を背景として、各社が報酬水準を引き上げている可能性を指摘しています。
ただ、転職者が見るべきなのは上昇率だけではありません。
転職後にどの案件を担当し、誰に対してどんな成果を出し、どの能力を身につけるのか。その経験が次のファームや事業会社で評価されるのか。年収の伸び方は、職位と役割の広がりに連動して考える必要があります。
応募前には、「3年後の年収はいくらか」と聞くだけでなく、「3年後にどのような案件を任されている想定か」「その経験は社外でどのように評価されるか」と確認してみてください。報酬とキャリアの両方を見れば、目先の数十万円の差に惑わされにくくなります。
画像: Pexels「Business Planning in Office」 / Mizuno K / Pexels License(無料利用条件を確認済み)
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