
BCGを志望する転職者から、「ケースの本を読んではいるが、実際に何から話せばよいか分からない」という相談をよく受けます。フレームワークを覚えても、問題の条件に合わせて使えなければ、面接ではかえって話が広がりすぎます。
BCG Japanの公式採用情報では、クライアント対応職のケース面接で問題解決力や分析力を評価すると説明されています。また、ケース面接の準備では、課題の構造化、インパクトの大きい論点への集中、思考プロセスの伝達が案内されています。
今回は、実際の選考問題ではないオリジナル例題を使います。ホテルの稼働率を題材に、数字を置き、論点を絞り、実行できる施策までつなげる流れを確認します。
東京都内のビジネスホテル1施設について、平日の客室稼働率を3年で10ポイント改善したい。どのような施策を実行するか。
前提は次の通りです。
この問題でいきなり「法人営業を強化します」と答えると、施策の理由が弱くなります。まず、目標の大きさを客室数に置き換えます。
販売可能な客室数は、100室×260日で26,000室です。稼働率70%では18,200室が売れています。80%にするには20,800室が必要なので、追加で販売すべき客室は年間2,600室です。
つまり、面接で追うべき問いは「どうすれば稼働率を上げられるか」から、「年間2,600室の空室を、どの顧客に、どの曜日で、利益を保ちながら販売するか」に変わります。
ここで一言、面接官に確認を入れるとよいでしょう。
「稼働率の改善が目的ですが、客室単価や利益率を落としてまで達成することは避ける、という理解でよいでしょうか。また、現状の空室は曜日別・顧客別に偏っていると仮置きして分析を進めます」
情報がない部分を勝手に事実にせず、仮置きとして明示する。この姿勢があるだけで、その後の議論がかなり安定します。
平日の稼働率が70%でも、月曜だけが低いのか、水曜と木曜に空室が集中しているのかで打ち手は変わります。まず曜日別に空室を見ます。
次に、顧客を法人出張、個人の観光・レジャー、イベント・団体などに分けます。最後に、公式サイト、予約サイト、法人契約、旅行会社など、予約経路を確認します。
この3つを掛け合わせると、例えば次のような仮説を置けます。
ここで大切なのは、最初からすべての切り口を細かく分析しようとしないことです。追加2,600室に最も効きそうなセグメントを仮説で選び、必要なデータを聞きにいきます。
私なら、まず曜日別・顧客別の空室を確認し、追加販売の余地が大きいセグメントから検証します。現時点では、平日の利用量を見込みやすく、客室単価を大きく崩さずに試せる法人需要を第一候補に置きます。
ホテル周辺の企業や、定期的に出張者が発生する企業に対して、法人契約を提案します。値下げだけではなく、予約手続きの簡素化、請求の一本化、急な出張でも予約しやすい枠の確保など、利用側の手間を減らす設計を組み合わせます。
ただし、1社への依存は避けます。契約企業数を分散させ、契約によって増えた客室数と、通常予約を置き換えただけの客室数を区別して測ります。
過去の宿泊者に対して、平日連泊や朝食・ランドリーなど、出張者が使いやすいプランを提案します。割引率を競うのではなく、「なぜ平日にこのホテルを選ぶのか」をつくることがポイントです。
この施策では、客室単価だけを見てはいけません。予約サイトの手数料、付帯サービスの原価、キャンセル率を含め、追加販売1室あたりの利益を確認します。
周辺の展示会場、美術館、医療機関、大学など、平日に人が動く場所を調べます。ホテルの立地と相性のよい目的が見つかれば、施設や交通との連携、平日限定プラン、イベント参加者向けの案内を組み合わせます。
この施策は、広く広告を出すより先に、どの需要が実際に存在するかを確認するべきです。休日の観光客を平日に移すのか、もともと平日に訪れる人を取り込むのかで、販売方法が変わります。
優先順位は、法人契約、既存顧客向け施策、周辺施設との連携の順で小さく検証します。例えば追加2,600室を、法人契約1,300室、既存顧客780室、周辺施設520室と仮置きすることはできます。ただし、この内訳は正解ではありません。実績を見て配分を入れ替える前提です。
1年目は曜日・顧客属性・予約経路ごとのデータ分析と小規模な実証、2年目は効果の出た施策の拡大、3年目は稼働率だけでなく客室単価と利益率を含めた最適化に進みます。
このケースで評価されるのは、ホテル業界の知識をどれだけ並べられるかではありません。
まず、稼働率の定義と目標を確認できているか。次に、10ポイントを2,600室に変換し、曜日・顧客・予約経路のどこに改善余地があるかを考えられているか。そして、すべての案を同じ重さで話さず、目的との相性、利益、実行難易度で優先順位をつけられているかが重要です。
BCGの公式ガイドも、課題を構造化したうえでインパクトの大きい論点に集中し、必要に応じて質問しながら思考を伝えることを勧めています。公式情報から読み取れるのは、特定のフレームワークを当てはめることより、ケースの条件に応じて考え方を組み立てる姿勢が大切だということです。
面接中に情報を追加されたら、最初の仮説に固執しないことも大切です。例えば「法人需要は十分にあり、実は木曜の個人客が弱い」と分かったなら、法人施策を主軸に置き続ける理由はありません。仮説を更新し、優先順位を変えられるほうが、実際のプロジェクトに近い思考です。
同じ問題を解き直すときは、答えが合っていたかだけでなく、次の点を記録してください。
転職者は、これまでの業界経験をケースの仮説に使えます。一方で、自分の業界の常識をそのまま当てはめると、問題文にない前提を持ち込むことがあります。「自分が知っていること」と「このケースで与えられた事実」を分ける習慣をつけてください。
また、BCGの選考ではケースだけでなく、経験・スキル・志望動機を確認する面接も案内されています。ケース対策と並行して、これまで何を課題と捉え、誰を巻き込み、どの数字を変えたのかも整理しておくと、転職活動全体に一貫性が出ます。
参考にしたBCG公式情報:
画像: Pexels「Man Writing On Board」 / Christina Morillo / Pexels License(無料利用条件を確認済み)
ケース面接は、問題集を一人で解くだけでは、自分の改善点が見えにくいものです。前提の置き方が曖昧なのか、論点を広げすぎているのか、結論の伝え方に課題があるのかは、対話しながら確認したほうが早く整理できます。
SymmetryLabは全員が大手外資コンサル出身です。志望先とこれまでの経験に合わせて丁寧なケース面接対策を行い、高い内定率を強みにコンサル転職を支援しています。ケース面接の準備や転職の進め方に迷っている方は、コンサル転職ならSymmetryLabへご相談ください。